山神果樹薬草園がある徳島県佐那河内村は、柚子やすだちだけでなく、キウイの名産地です。昼夜の寒暖差、山あいの地域の土の水はけのよさなど、佐那河内村の環境はキウイが育つのにぴったりだといえましょう。今回のSTORYは、佐那河内村のおいしいキウイを使ったジャムが生まれたきっかけです。
キウイは、山神果樹薬草園のすぐ近く、歩いて5分ほどのところにある「東野農園」で収穫したものです。園主の東野弘之さん、美澄さんご夫妻との出会いは2019年のはじめ。山神果樹薬草園は敷地が決まっただけで、建屋も何もない頃から、ご近所だからと気遣っていただきました。今もファクトリーショップにいらしたり、時には自家製野菜の差し入れがあったりと、何かと私たちを応援してくださっています。
おつきあいも深まってきたある日、東野さんから規格外のキウイのお話を聞きました。収穫した玉のなかには(地元では果実のことを「玉」と呼びます)、形が悪い、大きさが足りないなど、市場に出荷できないものも当然あります。通常の出荷はできないため、農産物の直売所に置いたりもしますが、見た目のせいで売れ残ることもしばしば。ご近所にも配ったりするそうですが、食べきれないときは、致し方なく廃棄することもあるということでした。
東野さんのキウイは、植物成長調整剤ではなく、環状剥皮法で栽培されています。環状剥皮法は、キウイのつるの表皮をリング状に取り除くことで成長を促す方法です。手間がかかるうえに玉の数が少なくなってしまいますが、ひとつひとつの糖度が高いのが特長です。それは規格外の玉でも変わりません。
そこで山神果樹薬草園がつくったのが「佐那河内産キウイのジャム」です。レシピは松山油脂富士河口湖工場のファクトリーラボが開発しました。キウイに加えるのはてんさい糖とレモン果汁のみ。シンプルな、シンプルなジャムです。パン、ビスケット、ヨーグルト、アイス。甘酸っぱくプチプチとした食感は、何に添えてもよく合います。東野さんおすすめはお湯割り。山神果樹薬草園のスタッフは、これを紅茶に代えて、蜂蜜も一緒に溶かすのがお気に入りです。
廃棄されたかもしれないキウイを、つくり手の東野さんから譲り受け、山神果樹薬草園が橋渡しになりジャムにして、お客様においしく食べていただく。まだまだ小さな規模ですが、SDGsのひとつ、「つくる責任 つかう責任」を、パートナーシップで果たしていきたいと思います。